第十章

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「てか、イケメンで賢いとかすごくね。何で俺存在も知らないんだろ」 「まあ、あんだけ暗くちゃ無理もねえよ。ほとんど空気だからな」 「へえ、もったいねえな。あれ?で、その夏目が何だっけ?」 「だから一が話した可愛い子が夏目のクラス聞いてきたって話だろ。なあ?」 ニノマエという苗字には聞き覚えがあった。 確か去年同じクラスだったように思うが、会話を交わしたことは一度もない。 「そう。って言っても俺夏目って誰だかすぐにはわかんなかったんだけどな」 「まあ夏目の話はいいよ。で、その子可愛かったの?誰似?」 「雰囲気暗かったけど、多分かなり可愛いよ。化粧とかちゃんとしたらモデルとか女優とかできるんじゃないかな。誰似って難しいなー。綺麗だけど、あんまり芸能人とかにはいないタイプ」 「へえ、見てみたかったわ」 誰の話をしているのか、確認するまでもなかった。 そもそも知り合いと呼べるような人は彼女以外には存在しない。 彼女と一緒に帰ったあの日から、五ヶ月が経っていた。 翌週に傘を返してくれた彼女と再び駅まで歩いた。 それから、僕たちは自然に一緒に帰るようになっていた。
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