第十章

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何が楽しくて生きているのか。 誰にも必要とされていない。 きっと、父の言う通りだ。 僕がいなくなったら、誰か困ってくれるだろうか。 学校の人は、僕の不在に気付かないかもしれない。 定食屋のおばさんが、いつもより忙しくなるかな。 他には。 そこで、高橋さんの顔が浮かんだ。 彼女は少しくらい寂しいと思ってくれるだろうか。 だったら、いいな。 こんな日常だが、僕は父を恨む気持ちは全くと言っていいほど持ち合わせていなかった。 僕は知っているからだ。 父が、ただ他人から愛されたいだけの、臆病な人だということを。 おそらく本当に父を愛したのは、この世界でただ一人、母だけだ。 だから父は、毎年母の命日になると、母の好きだったひまわりを持って墓参りへ行く。 そんな父が、僕は嫌いじゃなかった。
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