第十章

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「すごいですね」 「ん?」 「いえ、自分の非を認められるって大切なことだと思います」 さらりと僕の非を指摘するあたりはさすが内海先生だ。 そこで、僕と内海先生の院内ピッチが鳴った。 「はい、はいわかりました、すぐ行きます」 短く答えてスタッフルームを出る。 僕らは、準備を整えて救急車の到着を待った。 「救急車来ましたっ」 「はい、行きます。須藤さんっ」 「はいっ」 搬入口に向かって走る。 サイレンの音が近付くのがわかった。 迎え入れた救急車の後部の扉が開いて中からストレッチャーが運び出された。 その瞬間、僕の横に立つ須藤さんが叫んだ。 「将晴、まさはるっ」 え。 僕は瞬時に須藤さんに視線をやる。 いつも冷静な須藤さんが、これ以上ないくらいに取り乱していた。
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