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「ごめん、ちょっと外すね。院内にはいるから、救急隊から連絡入ったら呼んでください」
「はい」
更衣室のロッカーから携帯電話を取り出した僕は、充電切れによりその電源が落ちていることに気が付く。
どうやら電源を切るのを忘れていたようだ。
しまったと思ったが、当然充電器なんて持っていないので財布を手に院内の公衆電話へと向かった。
受話器を取って十円玉を入れる。
先ほど聞いた番号を入力して待つと、呼び出し音が鳴ると同時に相手が出た。
『もしもし。夏目?』
「ああ。遅くなって、申し訳ない」
『いや、全然。こっちこそ突然悪い。今、大丈夫?』
「少しなら。表はもう閉まってるから、救急外来の方から入れるか」
『おっけ、すぐ行く』
短い会話で、電話を切る。
その言葉通り、三池航平は五分もしないうちに現れた。
「こっち」
僕はスタッフルームへそいつを招き入れると、向かい合わせになってソファに腰掛けた。
「ごめん、いきなり」
「いや、僕はいいけど、三池くんこそこんな時間まで大丈夫?」
時刻はすでに午前一時を回っている。
何の仕事をしているのか知らないが、一般人は寝ている時間だろう。
「大丈夫だよ。てか、君付けとかやめろよ。三池でいい」
言われた通りに「三池」という言葉を口にしたが、なんだかざらざらとした違和感だけが舌に残った。
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