第十章

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三池航平。 大学一年生の時、同じクラスだった。 四月に家庭教師のアルバイトを紹介してもらった。 十一月、学園祭のときに一徹の死を一緒に目撃した。 それが僕と彼の関わりのすべてだ。 それ以上でも、以下でもない。 「どうしたの?僕に、何か用?」 わざわざこんな時間まで待っておいて何も用がないとは到底思えないのだが、三池航平は複雑そうな表情をして黙った。 それから、中途半端な笑顔を作って、「渡辺に連絡した?」と問いを投げる。 渡辺? 「翔太?」 久しぶりに聞く名前だった。 スキー旅行以来、一度も話していない。 「あれ?留守電聞いてない?」 「留守電?」 僕の携帯電話は常にと言っていいほど電源が切れている。 その間は当然留守電を残すこともできない。 留守電を入れることができたということは、僕が電源を切り忘れて放置していた先週末のことだろうか。 「悪い。ずっと充電切れたままになってて」 僕は素直に答えて首を振った。
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