第十章

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「そっか、忙しいんだな。ごめん」 「いや」 少し間を置いてから、「あの」と言った三池は「いつでもいいから、連絡してやってよ」と続ける。 「俺の言うことじゃないと思うけど」 そう言って目を伏せた三池は、初めて会った頃と、本当に何も変わっていなかった。 むしろ、あの頃より若く見えると言っても過言ではない。 高校生と言われても何の違和感もないことに、単純にすごいと思った。 「いや、するよ、連絡」 翔太。 渡辺翔太。 あれほど優しい人は、なかなかいない。 久保さんとの仲を邪魔してしまったことは、今でも申し訳ないと思っている。 「それで?」 「え?」 「それが本題じゃないだろう?」 一瞬黙って、それから意を決したように「徹の」と言葉を発した。 「徹の話が、したくて」 僕はごくりと唾を飲んだ。 わかっていた。 三池が僕の目の前に現れたときから、きっとその話題になるであろうことは予想ができていた。
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