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事が起こったのは、卒業式を間近に控えた二月の末のことだった。
午前三時、近所のコンビニで深夜のバイトをしていた僕は、ゴミを捨てようと店舗の外へ出た。
暗闇の中で影が動く。
所定の場所にゴミ袋を置いた僕は、その影に向かってそっと近付く。
途中でそれが人であることを認識して思わず息を飲んだ。
「あの」と声をかけたときには、目が慣れたのか、目の前でうずくまっている女性が全裸であることに気付いていた。
ただ事でないことは火を見るよりも明らかだった。
「大丈夫ですか」
涙目でこちらを見上げた女性を、僕は知っていた。
といっても、名前はわからない。
図書委員の一年生であろう、昼休みに図書室に行くと、よくその姿を見かけた。
「ちょっと待ってて、羽織るもの取ってくる」
僕はコンビニのユニフォームを脱いで彼女にかけると、急いで店内に入る。
先輩に簡易的に事情を説明しながら、コートと休憩室にあった毛布を持って彼女の元に戻った。
「大丈夫?とりあえず、中入ろう」
「ありがとうございます」とか細い声で囁く彼女の腕を引いてバックヤードへと入った。
彼女を椅子に座らせた僕は、店でココアのペットボトルを購入して渡す。
「すみません、ありがとうございます」
今にも消え入りそうな声だった。
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