第十章

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そこまで考えてから、「わかった」と僕は答えた。 範囲なんてどうでもいい。 誰にも言わなければ、それでいいのだ。 一はあまりにも僕の聞き分けがいいことに困惑したのか、一瞬黙った。 それから、『頼む。俺も、あの子のこと、誰にも言わないから』と電話口で言葉を発した。 僕は驚いた。 一徹は知っていたのだ。 あの時、僕のクラスを尋ねた女子高生が高橋千佳だということを知っていた。 それでいて、警察に黙っていたのだ。 何か言葉を発しようと思ったのに、それよりも早く『じゃあ』と電話が切れた。 僕は、画面の光が落ちた携帯電話をただ、じっと見つめた。
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