第十章

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「早川真帆って、知ってるか」 三池航平の言葉に、僕は懐古から引きずり戻された。 「知ってる」 僕の答えに対し、三池の目がわずかに見開かれる。 「面識は?」 僕はゆっくりと首を左右に振った。 「見たことはあるよ。彼女、図書委員だったから。でも、話したことはない」 「その子がすでに亡くなっていることは?」 「知ってる。メールが来たんだ。彼女の彼氏を探しています。誰か知りませんかって」 「メール?」 三池は怪訝な表情を見せる。 「ああ。同窓会用だか何だか忘れたけど、卒業式の時に全員メールアドレスを書かされたんだ。多分、それを使って一斉送信されてた。送ってきたのはうちの学年の人間だけど、頼んだのは多分彼女の遺族じゃないかな」 「いつ?」 「彼女の亡くなった二、三日後だったと思うけど、正確な日付は覚えてない」 嘘だ。 十一月二十三日。 彼女の命日の三日後にして、一徹の死ぬ前日のことだ。
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