第十章

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「理由……、彼氏を探している理由って、そのメールには……?」 僕は再び首を振った。 メールに理由が書かれていなかったことは事実だ。 しかし、予想は付く。 だからこそ、あの日、一徹は僕のもとへやって来たのだ。 「そうか」と何か考え込むように視線を落とした三池は、やがて「俺今、高校で教員をしてるんだけど」と脈絡のない発言をする。 僕は黙って話の続きを待った。 「早川夏帆という生徒がいる。早川真帆の妹だ」 今度は、僕が驚く番だった。 「彼女は、お姉さんの恋人を探していた」 その言葉で、僕は当時二人の関係が発覚しなかったことを知った。 付き合いだした時期が一の卒業間近だったためにあまり周囲に知れ渡っていなかっただけかと思っていたが、その後半年以上も続いていたのに誰も知らなかったとなると、本人たちが意図的に隠していたのだろうか。 「それで?」 どうして今になって判明したのかは不明だが、僕に対して早川真帆の名前を出した時点で、すでに恋人探しの答えにたどり着いているということはわかった。
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