第十章

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「夏目は、それが徹だって知ってたのか」 三池は自ら一徹の名前を出して尋ねた。 僕は一つ瞬きをして、首を振る。 「いや、知らない」 「にしては、驚かないんだな」 「早川の名前が出た時点で、大体予想は付くよ」 「そう」 複雑な表情を見せた三池は、一つ間を挟んでから、「なあ夏目、徹は、どうして死んだんだ?」と核心を突く問いを投げた。 「さあ。僕にはわからない」と僕は再び首を振った。 三池の失望したような瞳が僕の心を痛める。 まだ何か言いたそうなのに、しかし三池は、「そっか」と声を落としたきり黙った。 「突然訪ねてごめんな。また、何かわかったら教えてよ」 そう言って力なく笑った三池は、どうやらすでに会話を終息させようとしているようだ。 こう言っては何だか拍子抜けしてしまった。 僕が言うことではないが、こんな話で満足なのだろうか。 僕は内心首を傾げながら「ああ」と短く答えた。 「そうだ。さっき、倉科に会ったんだ」 腰を浮かしかけた三池が、先ほどよりも少し表情を明るくして言った。 「晃多?」 「そう」 これも久しぶりに聞く名前だった。
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