第十章

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時々、不安になるんだ。 僕の存在に、何か意味はあるのかって。 ――夏目に、救われたって、会えてよかったって、そう言ってた その言葉に、泣きそうになった。 そう言ってくれる人が、誰か一人でもいてくれるのなら、僕が生きてきたことも間違いではなかったのかもしれない。 ねえ、高橋さん、君は、僕に会えてよかった? それとも。 「高橋さん……」 僕はすがるように彼女の名前を呼んだ。 僕の声は、届かない。 届いちゃ、いけない。 わかっているのに。 「……好きだ」 届け。 そう願う、自分がいる。 「好きだよ」 やめろ。 戻れなくなる。 いや、もう、戻れない。
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