75人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいよ。見れば?」
「失礼します」とことわって、僕は携帯電話を開いた。
メールは予想どおり翔太からのものだったが、そこに記された文面に僕は思わず首を傾げた。
返信すべきかどうか考えていると、羽生刑事が「着いたぞ」と言った。
顔を上げると、随分と格式高そうな料亭が見えた。
「ここですか」
「こういうとこ、来たことないか?」
「はい……」
駐車場に入り、車が速度を落とす。
慣れた手つきで駐車した羽生刑事は素早く車を降りた。
「あの」
「何だ?」
「翔太に、会いに行きましたか」
僕の問いに、「ああ」と短く答える。
なるほど、それで。
「いい友達だな」
八年も前に一年弱の時間を共にしただけの男だが、翔太が褒められることを素直に嬉しいと感じた。
「ええ」
翔太が何を話したのか気になったが、いずれわかることだろう。
どうやら事前に予約を入れていたようだ、羽生刑事が名前を言っただけでスムーズに個室へと通される。
すでに料理も決まっているのか、メニューらしきものはない。
何だか慣れないことをしているようで居心地が悪い。
最初のコメントを投稿しよう!