第十章

61/81
前へ
/507ページ
次へ
「昨年結婚したそうだ」 久保さんが結婚式に翔太を招待したのか。 おそらく違うだろう。 一年にも満たない関係だったが、僕なりに久保志織という女性についてある程度のことは知ったつもりだ。 彼女は、僕はもちろんのこと、翔太のことだって式に呼んだりなんかしない。 そういう女性だ。 ではなぜ、翔太がこの写真を持っているのか。 久保さんと翔太の共通の友人などほぼ存在しないはずだ。 おそらく翔太が直接彼女に頼んで送ってもらったのだ。 何のために? 考えるまでもない。 「彼女は幸せになってる。もう気にするな」 羽生刑事がそんな言葉を吐いた。 どうやら僕らの間に何が起こったのかも知っているようだ。 「ってメッセージだろうな」 「……でしょうね」 やはり離れてよかった。 彼らの存在は僕にはもったいない。 「悪かったとよ」 何が?とは尋ねなかった。 その必要はなかった。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加