第十章

66/81
前へ
/507ページ
次へ
「三池、まあ正確には加護だが、『わんちゃん』という当然犬のことを指し示す言葉をどういうわけか人物を表すワードと捉えた。それが一徹の存在を引っ張ってくることになる」 加護? 加護将晴か? その人物が、早川真帆の手帳の文字の意味を取り違えたことに起因して、三池の口から一徹の名前が出たということだろうか。 不明瞭な点は多いが、それを尋ねるのはやめた。 キリが無い。 「やめましょう、埒があかない。すべて、話してくだい」 早く結論を知りたいという思いもあったが、しかしそれよりも気になるのはなぜ羽生刑事が僕にそんな話をするのかということだった。 僕が一を殺したと言っているのならばわかる。 しかし、そうではないのだ。 こう言っては何だか、一が自殺だろうと他殺だろうと僕には関係がないはずだ。 「案外短気だな。まあ、いい」 さらに料理が運ばれてくる。 その仲居が先ほどと変わっていることが気になったらが口にはしなかった。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加