第十章

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「最初に早川真帆に目をつけたのは一徹だった。文化祭の実行委員をきっかけに知り合い仲良くなったそうだ。一はどうにか早川と付き合えないかと考え、普段は縁のなかった図書室にも通うようになる」 図書室。 そうだ、僕はよくそこであの二人が話しているのを見ていた。 「早川が犬が好きだがマンションの規定で飼えないという話をしているのを聞いた一は、彼女を家に誘う口実にそれを使おうと考えた」 「一も犬を?」 「いや、飼っていない」と羽生刑事は首を振る。 ああ、それで。 「唐沢の犬を借りて、自らのものだと偽った?」 「そうだ」 リスクが高すぎる。 愚かだ。 なんて思うのは、僕が他人だからだろうか。 そうまでして、一は早川さんを手に入れたかったのだろうか。 「バレたんですか」 「ああ。早川が街中でその犬の散歩をする唐沢に会ってしまったことにより発覚した。唐沢がうまくフォローしたことで一と早川の関係を壊すような事態にはならなかったが、それが結局唐沢の評価を上げたんだから皮肉なもんだ」
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