第弐話

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ほんの数分の出来事なのに 長くも感じ 短くも感じた 妙な脱力感に高揚感 感じた事のない感情が渦巻き、こそばゆくも暖かい気持ちに包まれた 私は塊に近づく それは何の動作も見せない 「あぁ、…死んだんだ」 改めて感じた。 私が先程までの命をこの私の手で奪い取ってしまった 右膝を地面につけ、私は 『貴方を殺した事は悔やまない、私も貴方も生きる為だったから。』 何故か分からないが 涙が溢れ流れ、胸が苦しく締め付けられる 私は、この胸の痛みを知らない。 知らないけど、とても暖かいものだから…。 昔、誰かが言っていた。 “死んだものは心で生き続ける”のだと ならこの熊も私の中で生きてくれればいい 『私は貴方に逢った事を忘れないし、貴方を殺めた事を忘れない。』 自分に誓いを立てるように穏やかな声で 木が多く草が茂っている山の中、凛とした声が響いた
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