第壱話

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「…お腹空いた。」 少女は誰に言う訳でもなく、そっと口にした 少女はこの1週間、碌に食事をしていない敢えて言うならばそこらに生えている雑草を一口二口噛んだ程度 もう餓死しても可笑しくない状態 それでも少女は生きている、生きようとしている 両腕を抱え小屋の隅に寄り、この世のすべてから身を守ろうとしている そうする事、3時間40分頃 静けさとは言えないが、始めと比べたらほんの少し静かになった 少女は、喉が渇き潤そうと思い扉に手をかけようとした だがルールを思いだし、喉を潤す事を諦め扉から手を離した 何故こんなにも惨めで哀れか 扉に手を掛けようとした反対の左手は握り拳をつくり、小刻みに震えていた 少女はしばらく扉の前にいたが その目は何の感情も読み取る事ができず、一度目を瞑ると先程座っていた場所に戻り、する事が無く眠る事にした 少女が眠りについてから2時30分経った頃 小屋の近くで何か揉めている声が有った 少女は、その声で目を覚ましこんな時間に外で声をするのが気になりそっと壁に耳を傾ける その声は、嫌でもわかる 少女に取って親であり、少女に取っての人生を狂わした人間 "母親"と"父親"が何かを話し合っている 「ねぇあんた、何時まで“あの子”を家に置いとく の?」 「今、“あの子”をどないかしたらすぐにマスコミに嗅ぎつかれる。もしそんなことになったら、今までの事が世間に知られて家の旅館は潰れてまう…。」 「せやけど今日、冷夏ちゃん“あの子”に向かって怒鳴ったやろ?あれお客さんに聞かれてたら思うと……。いっそのこと“あの子”殺してしまう?」 何がどうなってこうなったのか 少女は涙を流す事も無く ただその場所に立っていた もう、自分は涙を枯らした と言わんばかりに
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