第壱話

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「どっちにしろ、あいつはいなくなって貰う。要らない存在だ。明日にでも山に連れて行く」 「わかったわ。“明日”ね」 私は明日捨てられる、こんなあっさりと。 惨めに、そして清々しさと 朝4時50分 私はいつも通り掃除をするために箒を持って小屋を出た いつもと何ら変わりのない日常が 毎日見てきたこの風景も すべて、何もかもが心の重みとなっていたのも今日まで… 私は晴れ晴れとしていた こんな汚い所から抜け出せる、そう思うと気分が良かった 小さな時から脱け出す事を何度も何度も考えた。 日々の虐待に耐えながらも… それで私は子供ながらに 業者が仕様する“裏門”を調べた 裏門は、使用人や仕入れた物等を持った業者が出入りする場所だ。 毎週の朝4時、発泡スチロールに入った魚を持った業者が裏門の扉を利用する。 また、それを厨房に持って行くため一時的に人が居なくなり裏門は、がら空きだ。 それでもその時間は、たったの10分程。 何度シミュレーションしただろうか。 私の足の速さなんて知らないし そもそもどれだけの距離を走れるのかさえ私は知らない。
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