第壱話

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それでも この場所から、この環境から逃げ出したくて裸足で走った。 裏門から出れたとき かすかに喜んでしまった。 小さな声だったけれども歓喜の声を出してしまった。 今、思えばなんて愚かなことをしでかしたんだろう。 気が緩んだと同時に小石で躓いて 目の前にあるものに突っ込んでしまった 大きな音を立て倒れたそれは 赤く錆び付いた自転車だった 膝、肘、顔面に擦り傷 思わぬ痛みに気が飛びそうになる そして シミュレーションになかった事態に動揺 が伴う 後ろから“バタン” 裏門の扉の音だ 業者の男が音を聞いて駆けつけてきたのだ。 そして私が“どこのだれ”なのか 知っているのだこの業者。 そして首根っこを掴まれ 起き出したあの親の前に突き出された なんてことだ… 私は失敗してしまった。 何度もしたシミュレーションは 何の役にも立たなかった!!。 母親に包丁を突き付けられ 見窄らしい格好でウロウロするな! そんな事を言われて“なら服を頂戴”って言ったら背中を向けさせられ 切りつけられた。 すごく痛くて、目眩がして、頭痛がして声が出せるまで叫んだ その時から私は逆らわなくなった だけど、今日で終わる
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