第壱話

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ついていった所は、裏口 そこで父親が口を開いた 「お前と一緒に山に山菜採りに行こうと思ってな。」 よくそんな見え透いた嘘を、と思いながら言ってやっ た 「私を捨てに行くと言えばいい。」 そう言うと父親の顔は先程の緊張した強張った顔では 無く、安堵したような顔をした 「其れなら話は早い。早く車に乗れ」 父親のこの顔を見た瞬間怒りを覚えた 「勘違いしないで欲しい。私は捨てられるんじゃな い、私がお前達を捨てるんだ。」 私はそう言って車に乗り込んだ 私で汚れないようにシートが敷かれている 私が言った言葉で父親が怒ったのを見て、思わず笑っ た 車を出してもう1時間は経った 見たこともない、知らない場所を通る 人気が少なくなったと思ったら車がガタゴト揺れた 今走っている道は舗装した道じゃないらしい 砂利道の窪んだ所にタイヤが通れば小刻みに揺れてい た車がガンと激しく上下する 窓の外を眺めて見るともう山道に入っていた 其れから10分経っただろうか 道は無く 車で行けるのはここまで 私は、自分の意思で車の扉を開け、自分自身で車から 降りた 「ありがとう。連れて来てくれて感謝するよ、名前 の“知らない人”。伝えてくれる?私が居なくなって喜 ぶのは良いけど、貴方達がした罪は消えない…。そう 言っといて。」 私がそう言って笑うと、父親は憤怒している 父親を“知らない人”と例えたのは、私に取って貴方は 大した存在ではない事を知らしめる為
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