[第一話]卒業なんて、したくない

3/33
119人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ
 彼女がまだ幼い頃に両親が離婚し、母と娘の二人暮らし。 「一人で何でもできる子になりなさい」という母の言葉。幼い頃からずっと言われ続けてきた言葉。  厳しく育てられ、当たり前のように家事もこなしてきたが、受験勉強を始めた頃から少しずつ、家事を怠るようになっていった。  家事をせず勉強に集中していると、仕事から帰ってきた母に怒られる。家事をしていても、勉強が進んでいないと怒られる。そうしていくつものストレスが重なり、ついに我慢の限界が訪れる。  それからは、母と顔を合わせる度に喧嘩ばかりの毎日で、親子仲は最悪の状態。来月に迫った受験勉強にも身が入らずにいた。  そんな日々が続き、母と目も合わせないまま、とうとう受験日。  出来は最悪。  当然の如く、結果は不合格。  第一志望だった進学校の受験に失敗し、第二志望を受験。地元の公立高校に入学が決まった。  それからも親子仲は相変わらずで、互いに会話をしようとしない園田家はいつも、静かだった。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!