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よく走る文庫というレーベルがある。 そこから小説を刊行し、多くの人に読んでもらって、いずれ世間に名を轟かせる大作家になる。 それが僕の夢。 いや、夢だった。 僕はその夢を諦めた。 とある作品のせいで。 よく走る文庫の新人賞に何度か応募した事があるが、いずれも落選。 それでも諦めずに習作を重ねて応募していたが、ある時、僕はそれを辞めた。 何故かって? 新人賞で大賞をとった作品は、よく走る文庫から刊行される。 僕はそれを毎回買って、目を通していた。 全ての作品が凄く面白かったわけではない。 けど、つまらなかったわけでもなかった。 やはり新人の大賞なのだな、と読みながら思ったものだ。 そんなある時、また小説が刊行された。 新人賞の大賞をとった作品だ。 トモヒロマツ、とかいう作者の作品。 タイトルは「迷ったキャットが走りすぎ!」 タイトルで怪しい気配はあった。 でも一応、大賞をとっているわけだし……。 そう思い、期待しながら読んだ。 そして僕はそれをビリビリに引き裂いて燃やした。 ……さて、ここまで言えば分かると思うが、「迷ったキャットが走りすぎ!」は、完全なる駄作だった。 これが大賞? しかもシリーズ化? その上、アニメ化? おかしいだろ。 どう考えてもおかしいだろ。 だから僕はよく走る文庫への応募を辞めたのだ。 こんな作品を大賞に選ぶ編集部はどうかしてる。 そんなクソ編集部、こっちから願い下げだ! 僕はその日のうちに、よく走る文庫関連の本を全て燃やした。 物心ついた時から買っていた本も、全て。 こうして。 僕の夢は破れた。
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