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「10‥‥9‥‥8‥‥」
俺の足元で、俺の幼なじみである信也(しんや)がカウントダウンする。
彼の右手は俺の右足に伸び、その手の平に握られているのは100円ライター。
「最近のライターは引きが重いからミスるなよ。」
「5‥‥4‥‥3‥‥」
信也は俺の忠告に対して頷きながらさらにカウントダウンを進める。
右足が強く布に締め付けられ、酷く重い。その鈍い痛みを、俺は来るべき一瞬に備え、心を高揚させながら待つ。
視線の先には夜の闇の中、ベンチの上で黒光りするデジタルカメラ。
友人のカウントダウンは最早聞こえなくなり、その時が来るのをカメラのセルフタイマーによる点滅光だけが教えてくれる。
足の布に染み込んだジッポ用のオイルの匂いに、頭がじーんとした瞬間、ハイになってきた。
これだ。
「アドレナリンじゃッ!!」
「点火ッ!」
ちッ、と音がした。
その音が僕の、聴いた、
最‥後の音だっ‥‥た。
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