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それと同時にぼくの意識は彼がもたらしたぼくの足を焼く灼熱に呑まれる。
僕は絶叫した。
「うごおおおお」
「蹴りやっ、蹴るんや櫻井!ぐぉあ」
彼の声に僕は耳をかさず、彼を突飛ばしてカメラの横に置いてあったバケツの水に向かって突進した。
バケツの水が僕の意識を、一瞬だけ正常へと導いてくれた。
信也は尻餅をつきながら、もう一度僕に叫ぶ。
「‥‥蹴るんや‥‥蹴れええぇェッ!!」
「うおおおおぁがあああぁ」
電光石火の一撃。炎を纏った足で繰り出されたそれは、サッカーを知らない素人が思い切りトーキックで地面ごと抉るような蹴りだった。
バケツは吹っ飛び、なかの水が弾けとんだ。
ほんの一瞬の達成感のあと、僕の意識はすでに無いのと一緒だった。
「おおおおおうぐっ」
地面に倒れ込むと同時に右足全体に冷たい感覚。
信也はいつまでも僕に水をかけてくれた。
いつまでも、いつまでも。僕が全身水浸しになっても。
それはまるで壊れた玩具のようで、霞んだ視界の中で見ていて滑稽だった。
用意していたバケツ七杯分の水を僕に浴びせ終わり、息を切らしながら彼は言う。
「任務完了や~。」
もう疲れた。
少し寒いけど、寝かせてくれ‥‥。
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