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「おお、これみてみ」
「どこだ」
デジタルカメラが捉えていた映像を二人で確認してみる。
もしかしたらと思ってはいたが、やはり光量が足りず、なにも見えない漆黒の闇が広がっていた。
苦労が水の泡かと考えた次の瞬間。画面の左下でなにかがチラと光った。
そしてほぼ同時に小さな光が一瞬にして長い縦長の火柱に変わった。
炎の光によって画像が鮮明になり、闇の中から僕と信也の顔がぼうっと現れる。
僕の表情は苦悶に歪んでいた。自分の足を包む炎の熱と、遊び半分本気半分の粗末な覚悟から一転、自分が焼け死ぬかも知れないという恐怖の感情によって。
信也の表情からは炎の熱による苦しみは見られないが、想像を絶する炎の大きさと、僕の顔を凝視している様子から、
やりすぎた
そうおもっているのがよくわかった。
「こりゃ任務完了どころか作戦失敗やな」
確かに作戦失敗であろう。
だが目的の映像は撮れなくとも、火がいかに危険か、身をもって学ぶことができた。
収穫はゼロではあるまい。
「ある意味真を見たな」
今日の撮影会はお開きになった。
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