第一話:いぬと巫女

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まあ、いいか。 私は最後の荷物が入っているダンボールを手に取ると、力を込める。 「ん……んっ……ぐ……っ」 何が入っているのかわからなかったけど、やけに重かった。 巫女とは言え、か弱い人間の女の子に変わりはない。 私は一度、力を入れようと踏ん張ると、ダンボールは軽く、ふわっと浮き上がった。 それは横にいた青年が、持ち上げてくれていたからのようで、荷物を運びながら、その青年は柔らかく微笑んでいた。 ……ってか、誰? ここの住人? 「あの……、ありがとうございます」 「いいえ、そのような勿体ないお言葉は不要でございます」 荷物を運び終わると、青年は、再び私に向き合い、しゃがみこみ、かしずいた。 「お会いできる日を心待ちにしておりました……早苗さま……」 その青年は、涙を流しながら、私の名前を愛しそうに呟く。 えっ!? 状況が読めない。 さま付けされたの初めてだし、何より、彼は誰だろう……。
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