15人が本棚に入れています
本棚に追加
まあ、いいか。
私は最後の荷物が入っているダンボールを手に取ると、力を込める。
「ん……んっ……ぐ……っ」
何が入っているのかわからなかったけど、やけに重かった。
巫女とは言え、か弱い人間の女の子に変わりはない。
私は一度、力を入れようと踏ん張ると、ダンボールは軽く、ふわっと浮き上がった。
それは横にいた青年が、持ち上げてくれていたからのようで、荷物を運びながら、その青年は柔らかく微笑んでいた。
……ってか、誰? ここの住人?
「あの……、ありがとうございます」
「いいえ、そのような勿体ないお言葉は不要でございます」
荷物を運び終わると、青年は、再び私に向き合い、しゃがみこみ、かしずいた。
「お会いできる日を心待ちにしておりました……早苗さま……」
その青年は、涙を流しながら、私の名前を愛しそうに呟く。
えっ!?
状況が読めない。
さま付けされたの初めてだし、何より、彼は誰だろう……。
最初のコメントを投稿しよう!