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「最近、獅子ヶ森町で幼女にジャムを塗りたくる不当な輩がいると聞くわ」
まだ水春幼女も来ていない放課後の手芸部室。
不機嫌面で椅子に座り、窓から外を見ていた朝陽は急にブツブツと独り言をし始めた。
僕は思わず黒野さんと顔を見合わせる。
――怖いなぁ。せめて僕がいないところでやってくれよ。
………………。
…………。
……。
「最近、獅子ヶ森町で幼女にジャムを塗りたくる不当な輩がいると聞くわ」
言った……。
今二回言った……。
間違いない、これは僕に言ってるらしい。
大方、僕が聞いてなかったと思ってもう一回言ったのだろう。
まったく同じ台詞を二回言われると理由はないけど凄く不気味だ。しかも朝陽は僕ではなく、外を見ているのだ。
「そういえばいるらしいよね」
いたいけな幼女にジャムを塗りたくる通り魔。
現在、被害者の女子小学生達は十九人とまで言われているが、誰一人として犯人の特徴を覚えていないらしい。
警察が血眼になってパトロールをしているが、未だに犯人は捕まっていない。
警察に対する世間の目は氷のように冷たく、面目丸潰れ状態なのは誰の目にも明らかだった。
その八つ当たりを受けたのは、他の誰でもない僕である。
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