【4】聖 六郎太

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「最近、獅子ヶ森町で幼女にジャムを塗りたくる不当な輩がいると聞くわ」  まだ水春幼女も来ていない放課後の手芸部室。  不機嫌面で椅子に座り、窓から外を見ていた朝陽は急にブツブツと独り言をし始めた。  僕は思わず黒野さんと顔を見合わせる。  ――怖いなぁ。せめて僕がいないところでやってくれよ。  ………………。  …………。  ……。 「最近、獅子ヶ森町で幼女にジャムを塗りたくる不当な輩がいると聞くわ」  言った……。  今二回言った……。  間違いない、これは僕に言ってるらしい。  大方、僕が聞いてなかったと思ってもう一回言ったのだろう。  まったく同じ台詞を二回言われると理由はないけど凄く不気味だ。しかも朝陽は僕ではなく、外を見ているのだ。 「そういえばいるらしいよね」  いたいけな幼女にジャムを塗りたくる通り魔。  現在、被害者の女子小学生達は十九人とまで言われているが、誰一人として犯人の特徴を覚えていないらしい。  警察が血眼になってパトロールをしているが、未だに犯人は捕まっていない。  警察に対する世間の目は氷のように冷たく、面目丸潰れ状態なのは誰の目にも明らかだった。  その八つ当たりを受けたのは、他の誰でもない僕である。
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