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確かに僕には通り魔を捕まえたい理由はある。
忘れもしない。通り魔と間違えられ、半日も拘束されたあの日を……。
しかし――
「…………(コク、コク)」
僕は立ちながら眠りこけている黒野さんを見る。
やっぱり巻き込みたくはないよなぁ……。
水春幼女は何とかごまかす自信があっても、黒野さんはそうはいかない。
四六時中関係無く付いて来てしまうストーカーだけはどうしても巻き込んでしまう。
幾らストーカーでも黒野さんが大事にならない保証はどこにもない以上、連れて行きたくない。
「それは良い考えですね」
茜子が窓から侵入しながら当然の如く会話に加わる。
「窓から入るなよ茜子」
「木の上で寝ていたら兄さんの声がしたのでつい」
しれっと無表情で言う。まるで猫みたいだな。
「お前なぁ、ただでさえ前回で注目置かれてるんだから静かに生きろよ」
「わかりました兄さん」
そう……。
獅子ヶ森家の御令嬢、獅子ヶ森 茜子は、皆が抱いていた『才色兼備の御嬢様』という幻想を見事にぶち壊したテロリストとして有名になっていた。
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