27才

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「………雄一郎……様……」 「…………何? 雪花」 「証を……証を、よろしく……お願いします……」 雪花は途切れがちにそう言った。 俺はきつく唇を噛み締める。 「……母親の分も……愛して……立派で……幸せな……子に……」 「…………わかったよ!」 俺は泣きながら大きく頷いた。 「証は立派に育てるから! 雪花は何も心配しなくていいよ!」 その瞬間、雪花は安堵したように微笑んだ。 それは。 13年間雪花と一緒に過ごしてきて、今までで一番美しい笑顔だった。 「………雄一郎様……」 「……………」 俺はもう、込み上げてくる嗚咽で返事を返すことができなかった。 雪花はそんな俺を見て、目を細める。 「………私……本当に……幸せでした……。雄一郎様と……結婚……できて……証を……産むことができて……」 その時、雪花は俺から視線を外し、何かを探すように視線をさまよわせた。 「……………雪花!」 「雪花!」 両親の声を耳にした雪花は、涙を両目から溢れさせた。 その瞼が、力なく大きな瞳を隠してゆく。 「………お父様……お母様……親不孝な……娘で……ごめんな……さい」 「……………雪花!」 今まで気丈に涙を見せなかった望月氏が、初めてベッド脇にくずおれるようにして嗚咽し始めた。  
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