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「あら、酷い泣きっ面ね」
前田君じゃなくて、岸本さんだったから
「………」
もはや疲労と恐怖で言葉が出ない
岸本さんは荷物を肩にかけたまま私を見下ろしている
それはまるで一週間前のあの日、私を傷め続けた男の姿を垣間見たものと似ていた
岸本さんは華奢な膝をおって、私の目線まで屈んだ
顔の距離が近くなる
「…可哀相に、誰にやられたの?」
そういって私の髪を撫でる岸本さんの手に悪寒が走った
…この人、今度は何を考えてるの…
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