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余談ではあるが、舞の持ってきたクッキーは彼女自身が作ったわけではなく、大河お手製のクッキーだったりする
子供達に持っていくと言うと、よしわかったの二つ返事で何のためらいもなく作ってくれる
そのあたりが、まさに大河の優しさを強調していると言っていいだろう
いや、優しさだけで作っているとは十分言いきれないかもしれないが、変態だし
「さて、それじゃ舞も来てくれたわけだし、少し息抜きでもするか」
慧音が教科書を閉じながらそう言うと、子供達は一斉にわっと部屋を飛び出し、舞の手を引っ張りながら何をして遊ぼうかなどと元気いっぱいに聞いてくる
普段無表情な舞も、子供達の前では微かながら顔に笑みを浮かべ、子供達の純粋な言葉に耳を傾けるのであった
それから遊びを楽しんでいくらか時間がたった
全力で遊んだ子供達は、すっかり勉学の事など忘れた様子で教室に戻ってくると
席に座りながら先程の遊びの話や近頃の世間話など、まだ遊びの熱が冷めていないようで雑談をし始めた
舞も着物の端が汚くなって、少し疲れた表情をしながら教室へと入ってくる
休憩時間もすでに越えてしまっているのに、中々静まらない場の空気
しかし
「そんなにみんなは話したいのか、そうかそうか……」
騒音に溶け込む鶴の一声
だがそれは温まった熱を冷ますには十分過ぎる程だった
今まで騒いでいたはずの子供達は、個々の席へと戻っていて誰一人と口を開けない
むしろ、皆顔が引き締まり若干青ざめているようだ
「よろしい、では授業を始めようか」
全員の様子に納得したのか、慧音はいつもの優しそうな顔に戻ると
教科書を開いて先程の授業の続きをぺらぺらと進めていく
舞は何故子供達が今の言葉だけで静まってしまったのか、その最たる理由を知っている
威厳の満ちた声よりも、少し眉間にしわのよった顔よりも、それらと比べものにならないお仕置きを彼女は持っているから
あの慧音先生の頭突きは痛いのだ
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