絵描きの家では

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……幻想郷はいつも通り平和に時を重ねている いや、たまには異変の一つや二つも起こったりするが、大体それでも平和なものは平和である ……時に、初夏にかけての幻想郷は、一際活気が沸き上がる季節だ 外の世界には、部屋の温度を一定の涼しさに保つクーラーというものがあるが、この幻想郷にはそんな現代文化の科学の結晶みたいなものなんてあるハズもなく、ずーっと暑さが体を熱するだけ だがその代わり幻想郷では、外の世界では無くなり始めている(もしくは既に無くなった)氷屋が、腕をよりにして各住民宅へと自慢の氷を届けに行ったりするのだ これを部屋に桶に入れて置いておくと、ほんわりと涼しい風が肌を過ぎていく 幻想郷の夏の一つの風物詩とでもいえばいいだろうか ……まぁ、要は何が言いたいのかというと そんなのほほんとした日常が、大した事件も起きる事無く普通に流れていくから、これこそ幻想郷が平和な象徴とでもいえるんじゃないか、と言いたかっただけだったりする そんな平和な日常の中、これからとある一人の人物にスポットを当てて、その人物の日常を見物していきたいと思う 幻想郷の真ん中に位置する、幻想郷の人間の(多分)8割以上が衣食住をする場所、人里 その里にある商店街をコツコツと一人、背中にリュックを背負いながら歩く男性がいた 彼の名前は“斎片大河” この人里に住み着いてから、約一年は経過している というのも、彼は元々幻想郷の住民ではなく、以前は外の世界に住んでいた人間なのである 何の理由があってか、自宅に帰ろうとしていた所を何かに跳ねられ、死亡してしまった体を、境界を操る妖怪“八雲紫”によって複製(レプリカ)として幻想郷へと連れ込まれる 以降、大河は幻想郷での生活を強いられる形になってしまった 勿論、彼自身にも最初は事態の把握が追い付かず、何度も自分の置かれた状況に絶望すら感じていたが 幻想郷の人々との様々な出会いにより、そのジレンマも次第に消え それから約一年という歳月をかけて、今の彼がいるというわけだ 正直どうでもい……ゲフンゲフン そんな過去を持っている彼だが、幻想郷に来た彼にこれからどんな日常が待ち受けているかを、淡々と見させてもらう事にしよう さて、今日は一体どんな事をしているのかな?
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