8・誕生日

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「それでは、陽美の19歳の誕生日を祝って… カンパ~イ!!」 今日が陽美の誕生日という事で、ライブ後の打ち上げはメンバー4人でしようと、いつものファミレスに集まっていた。 「みんなありがとう! これから…も…よろしく…な…。」 言いながら涙ぐむ陽美に 「おぉ? 陽美ちゃんって意外に女の子じゃん。」 ちゃかす拓也に 「うるせー!」 手で涙を拭きながら言ったが、いつもの迫力はなかった。 「でもホント意外。」 礼二もニコニコしながら言うと 「こんな…」 陽美が話し始めた 「こんなふうに誕生日祝ってもらった事なかったんだ。 父親いなかったからさ…」 「母さんずっと働いてたから…毎年、家に帰ったらテーブルの上にコンビニのケーキ置いてあるだけの誕生日だったんだ…。」 「だから…誕生日嫌いだった…。」 陽美はそう言うと、両手で顔を押さえて泣きじゃくった。 「これからは、毎年楽しい誕生日にしてやるよ。 ほら、ろうそく消せよ。」 拓也が優しく言いながら、陽美の肩に手を置いた。 「うん、ありがとう。」 陽美は涙でくしゃくしゃになった顔を上げて微笑んだ。 「♪ハッピバ~スディ トゥ ユー……♪」 礼二が歌い始める。 歌が終わり、陽美が勢い良く19本のろうそくの火を吹き消すと 「さすがボーカリスト! 肺活量が違うな!」 英太が笑顔で言いながら拍手をする。 「ホントにみんなありがとう…。」 また泣きそうになる陽美に 「おいおい、似合わないんだからもう泣くなよ!」 拓也がオデコをつつきながら言うと 「似合わなくて悪かったな!」 涙顔で陽美が睨む。 「やっぱりその方が陽美さんらしいよね。」 礼二も笑いながら陽美をちゃかすと 「殴るぞ!」 そう言って陽美は拳を礼二の前に突き出した。 「だんだん調子出て来たな!」 英太の言葉に微笑む陽美。 その後4人は2時間程楽しく話しながら、陽美の誕生日を祝った。
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