5・ケンカ相手

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「おっ、どうした?」 「別に…ヒマだからなんとなくオヤジの顔見に来た…。」 いつもの楽器店。 バイトが休みの陽美がふらっとやって来た。 「この前のライブ、良かったな。」 コーヒーを差し出しながら言う店主に 「見に来てたの? 声ぐらい掛けろよ。」 と、ぶっきらぼうに言った。 「途中で帰ったからな。」 「そっか… で、どうだった?」 「良かったって言ったじゃねぇか。」 「そうじゃなくて、具体的になんか無いのかよ?」 「具体的にねぇ… ま、初ライブにしては上出来だったよ。 もう少し"客を楽しませる"って事を意識した方が良いけどな。」 「そっか…。」 何やら考え込んでいる陽美に 「ずいぶん元気無いな?」 店主は自分もコーヒーを飲みながら言った。 「…打ち上げにスカウト来てさ、これからの活動をバックアップしてくれるって話しになったんだ。」 「ほ~、良かったじゃねぇか。 じゃあなんで元気無いんだ?」 「なんか旨く行き過ぎて…ちょっと不安なんだよね…。」 「らしくねぇな。 お前達の音聴いたらスカウト動いても不思議じゃねぇよ。 考え過ぎる事無いと思うぞ。」 「そうかなぁ… 確かに、音には自信あるけどね…。」 まだ釈然としない様子の陽美に 「お前はな、今まで…3年以上もバンドで旨くいった事が無いからな… 慣れて無いんだよ。」 「そうかもしれないね…。」 「まだ始まったばかりだし、今はこのまま突っ走ってりゃ良いんだよ。」 「そうだな…ありがとう。 なんかスッキリした。」 ニコッと笑う陽美に 「いつもそおゆう女らしい顔してりゃあ、拓也ともケンカしなくて済むんじゃないのか?」 「大きなお世話だよ! アイツが頭にくる事ばっか言うから悪いんだよ!」 陽美はまた仏頂面に戻った。 「ステージだと仲良さそうだったけどな。」 「そっか? なんか楽しくて仕方なかったんだよね……練習でもギター弾いてるアイツには腹立たないし…。」 「若いな…。」 そう言って微笑む店主に 「気持ち悪いな…なんだよ?」 しかめっ面で陽美が言うと 「何でもないよ。 とにかく…拓也は放すなよ。 お前にとって最高のパートナーだ。」 「あぁ…にくったらしいけど、あんなギターは他に居ないからね。」
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