6・リーダー

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「お世話になりました。 短い間でしたが、可愛がっていただいてありがとうございました。」 今日でファミレスのバイトを辞める拓也が、店長他スタッフに頭を下げながら挨拶をした。 「次のバイト先でも頑張れよ。」 「デビューしたらCD買うからな!」 先輩達も優しく声を掛けてくれる。 「はい!ありがとうございます! じゃあ、お疲れさまでした。」 拓也は深々と頭を下げてから店を出た。 「今度は肉体労働だな…。」 来週からは大工の下働きのバイトが決まっていた。 「拓也く~ん!」 足を止めて振り返ると、彩子が走りながら手を振っていた。 「はぁはぁ…足…早いね…。」 息を切らしながら彩子が手を差し出した。 「これ…もらってくれる?」 見ると、彩子は手に小さな紙袋を持っていた。 「何ですか?」 「今日でお別れだから…プレゼント。」 「ありがとうございます。」 そう言って、拓也は紙袋を受け取った。 「開けてみて。」 中を見ると、ギターのストラップが入っていた。 「ありがとうございます。 今まで使ってたのボロボロになってたから、新しいの買おうと思ってたところなんですよ!」 「喜んでもらえて良かった!」 「嬉しいです! 大事に使いますね。」 笑顔でそう言う拓也に 「もうバイトの先輩じゃないんだから、敬語はやめよ。」 彩子はちょっと淋しそうな顔で言った。 「でも年上だし…。」 拓也の言葉に 「学生じゃないんだから、1つや2つの年の差は関係ないよ。」 「そうですか…?」 「そうだよ! だから敬語禁止。 さん付けも禁止。」 「わかりました。」 「わかったよ…でしょ?」 「はい…じゃなくて…うん。」 二人は顔を見合わせて笑った。 「じゃあ、元気でね。 ライブやる時は必ず教えなきゃダメだよ。」 「はい…うん、必ず教えるよ。 彩子も元気でね。」 そう言って歩いて行く拓也の後ろ姿を (彩子かぁ…ちょっと嬉しいな。) 彩子は幸せそうな顔で見送っていた。
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