28人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんちわ~!
アーニーのゼロク、ワンセットちょうだい。」
ギターの弦を買いに来た拓也に
「おぅ、スカウトから声掛かったんだって?」
と店主が言った。
「そうなんだ。
陽美から聞いたの?」
「あぁ。
アイツ、旨く行き過ぎて不安だって言ってたぞ。」
「そうか…やっぱりな…。」
「やっぱり?」
「うん。
スカウト来て話してる時も、一人だけテンション低かったからね…。」
「そっか。
ま、色々話して元気になったから心配する事はないと思うぞ。」
「ありがとうございます。
…オヤジさんみたいな人居てくれると助かります。」
拓也は続けて
「俺の言う事だと、まともに聞かないからね。」
苦笑いしながらそう言った。
「まぁ、お前に言われた事ぐらいは力になってやれると思うから心配するな。」
「ありがとう。」
「ただしな…
本当にアイツの為に何かしてやれるのはお前だって事は忘れるなよ。」
陽美の性格が、勝ち気な反面ガラスのように脆い所があると、今までの付き合いの中で感じていた拓也は
陽美の相談相手になってほしいと、以前店主に頼んでいた事があった。
「…アイツはそうは思ってないよ。」
自信なさげに言う拓也に
「今はな…
でも、あんなに陽美が感情出すのはお前だけなんだぞ。
…受け止めてやれよ。」
「あぁ…とりあえず、今はただのケンカ相手だけどね。」
拓也は、そう言って微笑んだ。
「じゃあ、また。」
店を出る拓也の背中に
(頑張れよ…。)
店主は心の中で呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!