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「大変だねー」
周りの生徒もいつの間にか少なくなっていて、鈴華ちゃんの言葉がよく聞こえる。
「私もさ、転勤族だったからよくわかる!これからよろしくねっ皐月ちゃん!」
「よろしくね、鈴華ちゃん」
にこりと笑いかける。
人が良さそうな鈴華ちゃんを騙したと思うと申し訳ないが、いい友達に慣れそうな気がする。
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初日の授業が終わり、帰り支度をしていると鈴華ちゃんが私を待ってくれていた。
「…よし」
「終わったみたいだね。いっしょに帰ろうっ……寮までだけど」
鈴華ちゃんはへなっと笑い私の手をひいて歩き出した。
しばらく歩いていると鈴華ちゃんがそういえばさ、と話しだした。
「皐月ちゃんさ、朝職員室の前に居なかった?」
さっきのことか。
思い出すだけで少しムカつく。
「あー。うん、いた」
返事が素っ気なくなってしまった。
――こんな返事じゃ嫌な人に思われちゃったかも。
だが、私の心配は必要なかったみたいだ。
鈴華ちゃんは「やっぱり!」と楽しそうに笑った。
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