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「すいません。お断りします」
私、金澤皐月は現在危機的状況に遭遇しています。
「そこをなんとか…」
「お断りします」
駅へ行った帰り道。誰も居ないだろうと思い一人鼻歌を歌っていた。
「あなたの声は素晴らしい!ですから…」
「誉めても何もでませんよ」
だが、人がいた。
しかも今私にしつこく言い寄るこの人だ。
「私は、スタープロモーション代表、東条楓と言います。あなた、ボーカルになって下さい」
いきなり前に出てきて言われた台詞がこれだ。
申し訳ないが名刺がなかったらただの不審者にしかみえない。
「どうかお願いしますよ。あなたの声で歌って欲しいんです」
「……お断りします」
この人代表なのにこんなことをしていていいのだろうか。
少し心配になってくる。この人も会社も。
「お願いします!」
私だってスタープロモーションは知っている。
今人気アイドルの半分はここに所属しているくらいだ。スタープロモーション……略してスタプロの社長は一切謎に包まれているが、睨まれたら最後。芸能界にはいられなくなると言われている。
「……わかりましたよ」
私もついに心が折れたし、代表さんがあまりにも頭を下げるので了承した。
「では、次の週末に事務所でお待ちしております。ご家族といらして下さいね!ではっ」
「え、あの…」
言いたいことを言って代表さん……東条さんは走り去ってしまった。
「一体なんなんだ…」
とてつもない疲れが私にのしかかる。
はぁ、とため息をついた 時、時計の針は午後8時を指していた。
「っ!早く帰らないと!」
私の大変な生活はこれから始まるのであった。
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