プロローグ

2/2
前へ
/24ページ
次へ
「すいません。お断りします」 私、金澤皐月は現在危機的状況に遭遇しています。 「そこをなんとか…」 「お断りします」 駅へ行った帰り道。誰も居ないだろうと思い一人鼻歌を歌っていた。 「あなたの声は素晴らしい!ですから…」 「誉めても何もでませんよ」 だが、人がいた。 しかも今私にしつこく言い寄るこの人だ。 「私は、スタープロモーション代表、東条楓と言います。あなた、ボーカルになって下さい」 いきなり前に出てきて言われた台詞がこれだ。 申し訳ないが名刺がなかったらただの不審者にしかみえない。 「どうかお願いしますよ。あなたの声で歌って欲しいんです」 「……お断りします」 この人代表なのにこんなことをしていていいのだろうか。 少し心配になってくる。この人も会社も。 「お願いします!」 私だってスタープロモーションは知っている。 今人気アイドルの半分はここに所属しているくらいだ。スタープロモーション……略してスタプロの社長は一切謎に包まれているが、睨まれたら最後。芸能界にはいられなくなると言われている。 「……わかりましたよ」 私もついに心が折れたし、代表さんがあまりにも頭を下げるので了承した。 「では、次の週末に事務所でお待ちしております。ご家族といらして下さいね!ではっ」 「え、あの…」 言いたいことを言って代表さん……東条さんは走り去ってしまった。 「一体なんなんだ…」 とてつもない疲れが私にのしかかる。 はぁ、とため息をついた 時、時計の針は午後8時を指していた。 「っ!早く帰らないと!」 私の大変な生活はこれから始まるのであった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加