季節外れの転校生

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「もう知っていると思いますが、このクラスに転校生と教育実習生が来ます。それでは入ってください」 担任の名前は橘 真央(タチバナ マオ) 年齢は噂で30代前半らしいが、童顔で若く見える。 教育実習生の方は予想通り春姉だった。 転校生の方は昨日の帰りに会ったあの女性だった。 (同学年だったなんて) 正直驚いていた。 「じゃあ、自己紹介をお願いします」 「私は小鳥遊 風音(タカナシ カザネ)です。みなさんよろしくお願いします」 「私は高嶺大学から来ました東条 春香です。一ヶ月間よろしくお願いします」 不意に春姉と目が合った。 すると、笑顔が向けられる。 何だかこの先が不安で仕方がなかった。 「小鳥遊さんの席は榊君の隣でお願いします」 俺の席は真ん中の一番後ろ左には美沙がいるので、右の席だった。 当然ながら野郎からは睨まれる。 生きた心地がしなかった。 「榊君でしたね。また会えましたね。昨日はありがとうございました」 小鳥遊が席に着くと同時に言った。 隣では美沙が面白そうな物を見つけたって感じの顔をしている。 「あれぐらい普通だよ」 冷や汗をかいていた。 それに早くこの状況が終わってほしかった。 俺はHRが終わるとすぐに教室を出た。 地獄はこれで終わりではなかった。 「あっゆうくん」 春姉に呼び止められた。 「はいお弁当。朝渡し損ねたから」 何も今渡さなくても………… 「あ、ありがとう、春姉」 たぶん顔が引きつってると思う。 終えると春姉は職員室に向かった。 「いい物見ちゃった」 振り返ると美沙が見ていた。 もう小悪魔にしか見えなかった。 「今は聞かないは雄也。そ・の・か・わ・り、あとでじっくり聞かせてもらうわ」 言葉が出ない。 「もちろん、今は言わないわ」 美沙が近寄って来て言った。 “今は”か。 初日から終わった気がした。
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