季節外れの転校生

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少し遠回りしたが、小鳥遊と仲良くなれたと思うので良しとする。 別に恋愛的な意味ではないけど。 学校に着いたのは5時半ぐらいだ。 「遅くなってしまったけど大丈夫でしょうか?」 小鳥遊は心配そうに聞いてくる。 「大丈夫、大抵文化祭の準備期間の時はみんな6時ぐらいまではいるから」 この学校はお祭り事が好きな奴が多い。 美沙とか翔太がその例だ。 「ならよかったです」 ホッと一安心していた。 教室に戻るとやはり騒がしかった。 思った通りだ。 「…………ただいま…………」 当たり前だがクラスの視線が集まる。 「あっ、おかえり。ご苦労様」 美沙がよって来て、買ってきた物を確認している。 一つ一つ手に取っている。 「全部揃ってるはさすがね」 いや、誰でもできるだろ。 「あっおかえり、ゆうくん」 俺は一瞬で凍りついた。 教室中の視線が一気に集まる。 特に野郎のが…………死んだな。 もう嘘だろって感じだ。 「ただいま、東条先生」 あえて、こちらの方で呼んでみた。 事態終息のために。 「何でいつも通りに呼んでくれないの、ゆうくん」 無理でした…………分かってたけど。 それに何度も“ゆうくん”と呼ばないで欲しいここでは。 「あっ、そうそう雄也。東条先生の手作りのお弁当は美味しかった?」 美沙が思い出したように余計な事を言う。 背中に羽が見える…………まさに悪魔だ。 しかも、手作りの部分を強調して言ったし。 野郎の視線からは殺気を感じる。 「だから、今日のおかず、いつもと味違ったんだね」 真由香はこんな空気を感じもせずに言った。 「おばさんの味にはまだまだ遠いな」 春姉は嘆いていた。 こちらはこちらでこの空気を感じていない。 「そんな事ないですよ。充分美味しかったですよ」 真由香が真剣に言った。 寧ろその天然さが怖い。 「ありがとう、真由香ちゃん。私、嬉しいわ」 何だこの天然系の二人の、まったりトークは………… 鳥肌が立ってきた。 てか、どんどん悪化してないか?
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