38人が本棚に入れています
本棚に追加
授業が終わり、下校になるが俺は一人だった。
(みんな用事があるなんて。つまんないな)
真由香は部活。
美沙は文化祭関連の事で。
翔太はさっきまで居たが、いろいろな指導で呼び出され、生徒指導の先生に連れていかれた。
外は肌寒く、風が吹くたびに落ち葉が舞っている。
見上げると、空は高く、羊雲や鱗雲が浮かんでる。
それを見ると、季節が冬になっていくのを実感した。
「すいません」
前から声をかけられた。
慌てて、空から視線を前に向ける。
「はい。何ですか」
目の前には女性が立って居た。
身長は160cmぐらいだろう。
何より目立つのは腰ぐらいまである綺麗な黒髪だった。
それに大人っぽくて、年上に見える。
(卒業生だろうか?)
「私の顔に何かついてますか?」
そこで俺がその女性をまじまじと見つめている事に気づいた。
「な、何でもないです」
少々恥ずかしかった。
「ならよかったです。それより職員室はどこにあるんですか?」
(卒業生じゃないのか?て事は転校生か?)
見た目からはとても同世代に見えない。
「そこの階段から二階上がって、右に曲がってまっすぐ行けば着きますよ」
「分かりました。ありがとうございます」
俺はその笑顔に一瞬ドキッとした。
「ど、どういたしまして」
顔が赤くなっているかもしれない。
「それではこれで。また会えるといいですね」
社交辞令だろう。
そう言って去っていった。
日は暮れ始めていて、段々と寒さが増してくる。
家までは歩いて20分程かかる。
自転車通学は許可されているが、特に何もない限り俺は歩いて通学している。
(特に理由はないんだけどな)
今日はいつもより早いペースだったようで、15分ぐらいで家に着いた。
最初のコメントを投稿しよう!