季節外れの転校生

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授業が終わり、下校になるが俺は一人だった。 (みんな用事があるなんて。つまんないな) 真由香は部活。 美沙は文化祭関連の事で。 翔太はさっきまで居たが、いろいろな指導で呼び出され、生徒指導の先生に連れていかれた。 外は肌寒く、風が吹くたびに落ち葉が舞っている。 見上げると、空は高く、羊雲や鱗雲が浮かんでる。 それを見ると、季節が冬になっていくのを実感した。 「すいません」 前から声をかけられた。 慌てて、空から視線を前に向ける。 「はい。何ですか」 目の前には女性が立って居た。 身長は160cmぐらいだろう。 何より目立つのは腰ぐらいまである綺麗な黒髪だった。 それに大人っぽくて、年上に見える。 (卒業生だろうか?) 「私の顔に何かついてますか?」 そこで俺がその女性をまじまじと見つめている事に気づいた。 「な、何でもないです」 少々恥ずかしかった。 「ならよかったです。それより職員室はどこにあるんですか?」 (卒業生じゃないのか?て事は転校生か?) 見た目からはとても同世代に見えない。 「そこの階段から二階上がって、右に曲がってまっすぐ行けば着きますよ」 「分かりました。ありがとうございます」 俺はその笑顔に一瞬ドキッとした。 「ど、どういたしまして」 顔が赤くなっているかもしれない。 「それではこれで。また会えるといいですね」 社交辞令だろう。 そう言って去っていった。 日は暮れ始めていて、段々と寒さが増してくる。 家までは歩いて20分程かかる。 自転車通学は許可されているが、特に何もない限り俺は歩いて通学している。 (特に理由はないんだけどな) 今日はいつもより早いペースだったようで、15分ぐらいで家に着いた。
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