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「ただいま」
ここまではいつもと何も変わらない日常だった。
「あ、おかえり~ゆうくん!」
玄関で抱きつかれた。
(な、なっな、なんだ!?)
理解しようが顔には二つの柔らかい物が当たっている。
理性を保つのに精一杯。
「お願いだから離してくれ、春姉」
すぐに頼む。
「だ~め、久しぶりなんだからぁ」
より強く抱きつかれる。
もうなすがまま。
それから待つこと数分。
ようやく…………本当にようやく開放された。
「で、どうしてここに春姉がいるの?」
東条 春香。
俺の従姉のお姉さんで今は大学生だ。
まあこうして会うたびに抱きつかれる。
でも、しっかりしていて、家事全般が得意。
特に料理はすごく美味しい。
「おじさんが長期出張でおばさんもついていくから、ゆうくんの事お願いされたの」
春姉は満面の笑みで言った。
もちろん俺は何も聞いていない。
俺の両親は今でもラブラブ。
見ているこっちが逆に恥ずかしくなる程。
だから、母さんがついていくのは分かる。
「今日から一緒に住む事になったからよろしくね」
予想はできていた。
(ここまでの話を聞けば誰でも分かるけどな)
「大学はいいの?」
「心配しないで、ここからの方が近いの。それに遠くなっても来たよ」
もうどう反応していいのか分からなかった。
(昔からこんな感じだったよな)
「部屋はどこを使うの?」
そこが一番気になる。
それに何となくヤバイ予感がすごいする。
「下の和室使ってって言われたけど、私はゆー「却下します」」
聞くまでもなかった気がする。
たぶん抗議されると思うけどな。
「まだ言ってないよ。私は別にいいのに」
ほら、思った通り。
俺は玄関で頭を抱えていた。
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