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奏さんがナイフの刃を掴んだまま男を冷ややかに見下ろしてる。
「奏さん指がっ!」
「待ってください。りおさん、触ってはいけません」
榊さんが阻んでいた背中から出ることができたと同時に奏さんに触れることを拒否された。
「でも、奏さんが!」
「こういう時には抜いてはダメなんだ。こうするんだ」
仁さんがわたしより先に奏さんの前に滑り込み、血だらけの指をナイフから一本一本開いて中からナイフを取り出した。
傷ついた指や手のひらから鮮血が滲んでくる。
「奏さん…」
髪を結ったハンカチリボンを抜き取り手に巻き付けると悲しさが込み上げてきた。
ぐすっ。
必死で我慢する。
「このぐらい大丈夫だ」
それより。と。
奏さんにギロリと睨まれて、
「ひっ!」
ひきつった悲鳴を上げたのは奏さんを刺そうとした男。
目の前に血にまみれたナイフを放り投げられて腰を抜かしていた。
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