11人が本棚に入れています
本棚に追加
周囲の天使どもはまるで奇異なものでも目にしたかのように眺めているが、そんな視線向けてないでそのガキ取り押さえろや、しばくぞ。
そんな折、こっちを振り返って何やら腹の立つポーズを取っていたガキだったが、いざ再び走りだそうとしたとき、前方の、やや歳のいったババアにぶつかった。
普通ならよろける程度で済むものだが、いかんせんそのババアは足が悪かったらしく、衝撃で後ろに倒れそうになっている。
そんな光景を見てオレは、あードンマイ、くらいしか思っていなかったのだが、その倒れ込むババアの後ろにさっと回り込む影があった。
ってか、例のガキである。
ガキはババアの背中をその小さな手で支えると、子供とは思えぬ力でババアの態勢を立て直した。
さすがは悪魔。
それから、てこてこと擬音のつきそうな、子供らしい歩き方でババアの正面に回ると、その顔を覗きこみ言うのだ。
「おばあちゃん、大丈夫?」と。
いやいや原因はお前だろうとか、んなの見て分かるじゃねえかとか、細かいことはどうでもいい。
問題なのはこれ、あのガキ、悪魔の、それも魔王のガキだというのに、まるっきりその本来の性質とはかけ離れているのだ。
というか、いっそすがすがしいほどに善良な子供Aなのだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!