1953人が本棚に入れています
本棚に追加
「……訳、分かんないよ、希咲」
そう言った自分の顔が、笑っていた。
あの頃の俺を、希咲は見ていたんだ。
夜中に膝を抱えて泣いている、弱虫な子供。
今も何も変わらない。
それでも、好きだと言ってくれるのか?
お前の気持ちを知ってて、自分から煽っておいて、逃げたのに。
それでもお前は逃げないんだ。
胸の奥が苦しくなった。
妹としてなのか、そうじゃないのか、良く分からないけど。
初めて、希咲を愛しいと思った。
希咲の手をそっと布団の中に戻して、もう一度頭を撫でた。
「……ありがとうな」
そう小さく言って、立ち上がった。
来た時と同じようにそっと部屋を出て、扉を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!