希咲

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小学校5年生のとき。 お母さんと一緒に徳島行きの高速バスに乗った。 お父さんとお兄ちゃんはいなくて、 どうして2人だけで行くのかと尋ねると。 「希咲(きさ)の本当のお父さんが死んじゃったから」 お母さんは言った。 高速バスには子供は私しかいなくて。 バスのモニターには『寅さん』の映画が映ってて。 あの底抜けに明るい曲が流れて。 私はそのとき初めて、 お父さんとお兄ちゃんとは血がつながっていないことを知った。
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