新年ですか?

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 蒼黒の髪の女が放つ冷気が辺り一帯を覆いはじめる。時期的には夏間近なのに吐く息が白くなり、鳥肌が立ち体が震える。  薄手のスーツを着ている幸人には、堪らない。  それに比べて、 「幸人、幸人。吐く息が白いっ」  銀髪碧眼のユキがはしゃいでいる。年齢加速した今の彼女は見た目は幸人と同年代だが、中身が幼い。寒さを感じていないのか、気にしないのか何度も息を吐いている。 「そんなことは……どうでもいいから。目の前に注意しろ」 「むう、分かってるけど」  注意すれば、少しは気を引き締めるユキだが、拗ねたように幸人を睨む。 「あなたたち、うるさい」  今まで黙っていた女が小さく呟く。苛立ちを覚えているのか、怒っているように見えるが、その気持ちの高ぶりに反比例するように周りの温度は下がっていく。
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