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「それじゃあこれが鍵です。何かあったら電話してください」
「はい。これからお世話になります」
大家さんは柔和な笑顔を見せて、曲がった腰に手を当てながら出て行った。
今日から初めての一人暮らしだ。ここが俺の生活する部屋になる。
ぐるり、と部屋を見渡す。
まだ自分の家だという実感は沸かないが、まぁ徐々に慣れていくだろう。
学校、駅共に徒歩10分圏内。六畳一間で風呂とトイレ別で家賃三万円は破格だった。
我ながらいい物件見つけたな、と直輝は一人ほくそ笑む。
「とりあえず生活用品がいるよな」
財布の中身を確認して、玄関へ向かう。
途中、何かの気配を感じて振り返った。当然、何もない。ベランダからの風でカーテンが揺れているだけだ。
さして気にせず、部屋を出た。
◇
近くのスーパーで商品をカゴに入れながら、ふと疑問に思う。
「あれ? 俺、ベランダの窓開けてたっけ?」
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