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その考え方は正に独特、授業も教える気があるのか無いのか判らないものだ。
加えて時間にはルーズ、遅れて授業に来たり、来なかった時すらもある。
ダメな大人の代表みたいな人なんだよね……
「課題提出だろう?
私が預かって峰月教諭に提出しておこう」
「ありがとうございます……」
どっちが教諭らしいって言えば一目瞭然だよな……
「まぁ、この芸術科には変わった人間が多々居るからな……
教諭とて変わり者が居ても仕方ないさ……
それよりも、毎時間提出をするのはお前くらいだと、峰月教諭が君を褒めていたぞ」
「え……
いや、まぁ……
でも、たまに納得出来ない物も出してますし……」
この提出もやっつけだし……
「君は芸術家よりも漫画家みたいな思考をしているんだな……」
「……畑違いですかね?」
少し、言葉が刺さる。
『好き』だけでは続けられない仕事だから……
やはり、適性ってものがあって……
無ければ、『ふるい』の網に漏れて落ちてしまうんだろうか?
「芸術家は変わり者が多い。
だが、君はその芸術家の中での変わり者だ。
良いか悪いかは私は判断できないな……」
これは……
『優しさ』なのだろうか?
それとも、本音?
「まぁ、私は君も随分な変わり者だと思ってるんだがね」
「……え?」
「さて、課題はこれかい?」
何か言われたような気がしたけど……
この先生は同じ事を言う事は少ない。
「はい……」
「君はこの前もこの桜を描いていたね……」
「綺麗だと思うので……」
「なるほど……
だけど、出来るだけ色んなモノを描きなさい、時間が止まっては勿体ないからな……」
時間が……止まるね……
「自分では良く出来たと自負したいんですが……」
「ほぅ?
確かに綺麗だ、それに異論は無いよ」
……僕は何故か『あの』桜に固執しているような気がする……
理由は何だろう?
それとなく、足を向けてしまいそうにもなる。
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